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サントラ・ジェームズ・ボンド・映画音楽アートの研究・映画コラム

「ジェームズ・ボンド映画」のサントラを中心に、映画音楽、映画批評、アートなどを述べていきます。映画コラム・写真集などあります。

ぼくのお日さま



■ぼくのお日さま
2024年/1時間30分/日本

監督・脚本・撮影・編集:奥山大史
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮

この作品については、初見の印象と、その後いろいろ調べた結果の印象が違いますので、ちょっと評するのが難しいです。まあ取り上げた以上、順々に申し上げます。

まず男の裸ですが、小学高学年の男子ひとりの上半身のみ、2シーンで2カット、同じ場所で鏡に映す同じショット、どうと言うことはありません。ですので、今回ここで、映画『ぼくのお日さま』を取り上げる理由は、
池松壮亮がゲイを演じていて、筆者がそれに惹きつけられたからです。

・ゲイを描くということ

実は筆者は初めこの作品をwowowで途中から見始めました(後で配信で全部見てます)。
池松氏がアマチュアフィギュアスケートのコーチ役で役柄と池松氏の微妙な所作がそれ(ゲイ)っぽい。筆者のようなゲイ当事者でなければ分からないくらいの微妙さ。これは池松氏の「地」なのか意識した細かな演技なのかは不明ですね。案の定、後半の展開で男性パートナーとの同居、つまりゲイということですが、演出の力なのか演技の良さなのか、これが実に自然。パートナーバレする前はゲイの設定を明かしてない訳で、そこでゲイ当事者でなければ見抜けないような演技をされているのは見事としか言いようがないです。

昨今、ゲイを演じる男優は多くいますが、あからさまなオネエになっちゃったり、「ゲイバーに行く」「ハッテン場に行く」「男と同居している」「ゲイセックスをしている」などの状況設定で「この俳優はゲイの役をやっています」ということにする場合が多い。

ところが今作の
池松氏の演技は実に自然で過去にゲイを演じた俳優に無かった境地ですよ。これは彼の「地」なのかと錯覚するくらいですが、池松氏は他の作品で全然違うキャラも演じてますからね。まあ凄い役者だと受け止めるのが妥当でしょう。

話逸れますが、はるか昔は「子役は大成しない」と言われていたものです。今やそれは完全に通用しませんね。
池松氏の子役時代は『ラストサムライ』でトム・クルーズと対峙したのを始め、順調に年齢に応じた役をこなしてる。同じく子役から成長し続けている神木隆之介しかり、『男はつらいよ』『北の国から』等の吉岡秀隆しかりです。



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・『ぼくのお日さま』初めの印象

さて映画
『ぼくのお日さま』ですが、ほぼ予備知識なしに見て、非常に好印象。途中から見始めたこともあり、池松氏演じるゲイが主人公と思い込み、ゲイ表現の自然さや状況描写を含み、非常に良作。傑作とまでは言わないが、センスのある秀作と受け止めました。少女のゲイへの嫌悪感はこちとら当事者としては不愉快だが、これは話の肝でもあるのでまあ目をつぶろう。

ただし、この良作と受け止めた時点でも、非常に不思議な点に気が付いていましたよ。それはね、「妙に良く出来てるな」ということ。監督の奥山氏の前作は非商業映画の『僕はイエス様が嫌い』であり、本作
『ぼくのお日さま』が初めての商業映画、20代の新人監督であり、自主映画の『僕はイエス様が嫌い』での資金の苦労などの情報は知っていました。『僕はイエス様が嫌い』も綺麗に仕上がっている。これは作り手がCM製作会社出身である所以だろうと勝手に納得していましたよ。

で、この
『ぼくのお日さま』も、その真摯な姿勢が出現したものだろうと受け止めていました。始めはね。ただ、真摯だけでは収まらない不思議な感覚がこの映画にはあるのよ。それは鑑賞している最中にも発生してました。

何のことか分かりませんから具体的に言います。

まず、20代の新人監督、センスがあるにしてもペーペーでしょうよ、それがこの製作体制の完成度の高さ。さらに具体的に言いましょう。一番にロケーションの見事さ、北海道の各地、架空の街とのことですが、まあこれは監督はじめスタッフの眼力と足でなんとかなるかもしれない。

そしてスケートリンクの貸し切り、ホッケーのシーンとフィギュアのシーンもあり、同じ場所で済むのかどうかは存じませんが、数日で済む撮影とは思えませんよ。また別のスケートリンクも写している。

出演者のスケート技術も必要だし、リンクはストーリーのメインの場所でもあることですから、それなりの期間使用せざるを得ない。これを順調に用意するには、演出の領域ではないが、製作スタッフの力だと推測します。

さらに「え?」と思ったのが、正面からの長回し車の移動撮影。筆者の知識では、大抵の場合、演者は実際に車を運転しながら演技をしない。遠目では有り得るが、ミドルアップやアップでは運転と演技に集中できず危険だからだ。ですので大抵の場合、トレーラーなりを使った専門の撮影方法を用いる。もちろん専門スタッフや機材、専門業者の登場になるかもしれない。これをセッティングするには製作スタッフの範疇で費用もかさむ。そして、これを撮影、演出するのは監督の仕事。

この車移動正面撮影シーンをカメラマンも兼ねている奥山監督はサラッとやってのける。演者も自然な演技をこなしている。これは大したもんだと思う前に不思議さを感じました。ペーペーの新人監督がやる事かと…。

上記が映画
『ぼくのお日さま』初鑑賞の印象と違和感です。

********下記、ネタバレあります。ご注意。








・『ぼくのお日さま』の情報を鑑みて印象が変わった。

初見の印象を大切にしろよと自分でも思うが、印象が変わったのは、ネットの評判、情報を見て、筆者の見方が偏っていたことと、初見で不思議だと感じていたことの答えが見えたような気がしたからです。

先にネットの評判を言っておきましょう。Yahoo!映評では、3.9点(5点満点で)、比較的高評価、だが、役立ち度(いいねに匹敵)では2点の低評価が上位にきている。つまり終盤の少女の態度が話をぶち壊し納得がいかないという論調が多い。

他の方の映評で筆者自身気が付いたのですが、メインの話は少年少女であって、コーチのゲイ話はサブストーリーであること、筆者はゲイ話をメインとして鑑賞してたため、少年少女にはあまり気づいていませんでしたね。だから少女の残酷な言動もコーチに対する恋心を元にしたものと鑑賞後に気が付いた。

あと映評の中の言葉で「あざとい」という文言で思いましたが、コーチの同棲生活が仲良すぎとも思いましたね。自然な演技には違いありませんが、一緒に住んでイチャイチャしすぎでは?とも思いました。もっと冷めた描写があってしかるべきとも思います。そのイチャイチャを外でもやっちゃうんだもん。まあそれを少女に見られて話が転がる訳ですが。

まあ「印象が変わった」と言っても自分の視点が変わって冷静に見直せたということでしょう、良作には違いありません。

********

・さて、デカい情報が入ってきた。名プロデューサーの登場。

映評の中で「監督は名プロデューサーの奥山和由の息子なんだから」という文言があって「は?」と思ってネットで調べたがハッキリしない。どうも隠してる感じ。wikiなんて双方で「父」「子」を削ってる。嘘つき傾向のAIでは、「奥山大史監督の父親は奥山和由です」とハッキリ言ってますわ。お二人の画像も見たが顔も似てる。

だったらちょっと話が違うんじゃないの?と正直思います。同じ業界に居て家族で全く知らんぷり、ただでさえ映画製作って、各社、各個人、協力関係、コネクションが重要な業界で「お前ひとりの力でやれ!」なんて有り得ないと思うわ。

親だとされる奥山和由氏を知らない方に簡単に説明しておきましょう。奥山和由氏は、元松竹の取締役で烈腕プロデューサー。100本近くの映画作品をプロデュースしている。ちなみに当時の松竹社長はさらに父親の奥山融(1998年まで)、1998年、松竹内の実質クーデターで、奥山融、奥山和由親子は松竹から追放される。その後、奥山和由氏はチームオクヤマと称し、独自に映画製作を継続している。

ピンと来ない方には、北野武初監督作『
その男凶暴につき』のプロデューサーは奥山和由氏だと言えばいいかな。病気休養の深作監督の代役で北野武を抜擢したのは奥山和由氏だ。いわば世界の北野武を生み出したのは奥山和由氏と言っても過言ではない。

その奥山和由氏が、今作品『ぼくのお日さま』の監督・奥山大史の父親だと?繰り返すが、そりゃ話が違うわ。政治家で言えば「地盤・看板・カバン」の地盤(ノウハウ・コネクション)はオーケー、もう出来てる。メール1本、電話1本で済むわ。看板(知名度)はどうも隠してるみたいだが、コネクション上で信用にはなるな。「勝っても負けても何とかなる」みたいな。カバン(金)は、元々映画産業自体、儲かるもんではないから金に関してはそう簡単には行かないだろうけど、コネクション上の口利きは出来るだろうと思う。プロデューサー業は金集めがメインの仕事だからね。

そもそも父親の和由氏が情報知識コネクション持ってるんだから、「あの会社のあのプロデューサーに任せればオーケーよ」と一言言えばそれで済む。そもそもそれは息子の奥山大史氏の仕事では無いよ。後は担当プロデューサーと上手くやってれば良いだけ。そりゃカンヌにだって出せるさ。お父様のコネがたっぷりあるんだし、そもそも作品の出来も良い訳だし。

筆者が初見で不思議に思った事象がちょっとは解けたような気がします。

俳優の竹内力が立ち上げたとされる当作品の製作会社や当作品の奥山大史監督が影響を受けているとする橋口監督にも触れたいところですが、長くなるので割愛です。

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