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サントラ・ジェームズ・ボンド・映画音楽アートの研究・映画コラム

「ジェームズ・ボンド映画」のサントラを中心に、映画音楽、映画批評、アートなどを述べていきます。映画コラム・写真集などあります。

雨の中の慾情



■雨の中の慾情 Lust in the Rain
2024年/2時間12分/日本

監督・脚本:片山慎三
出演:成田凌、中村映里子、森田剛、伊島空、竹中直人

この作品の文面を書くためにネットからこの作品のポスターをいただいてきましたが、まあ酷いポスターですね。原作のつげ義春のシュールなイメージを意識したのだろうけど、色気も何もあったもんじゃない。

映画のポスターって、内容はともあれ、まず色気を出すもんよ。アクション映画だって同様、メインが車の写真(イラスト)だとしても車そのものの色気、乗ってる人物は必ず色っぽいはずです。まあいいわ、公式サイトから主演3人の写真いただいてきます。



この写真もいまいちですね。右端の森田剛はまあ良しとして、左端の成田凌、まるで普通の別人。まあ私感ですが成田凌ってもう30過ぎの既婚者ですが「美少年」だと思う。当作『雨の中の慾情』でもうっとりするような美貌を見せています。見惚れます。

++++++++ 濡れ場の多さ

さて映画『雨の中の慾情』ですが、いろんな論じ方がありますが、まずは「男の裸」クリアーしましょうか。上映時間、2時間10分以上ある内容で、成田凌と最後のシーンのみ登場する伊島空の男の裸を入れ込んだ濡れ場が5シーンほどある。数えたわけではないので正確ではありませんが、多くあるということです。

濡れ場シーンの撮り方は、R15(15才以下観覧不可)のコードに引っかからないくらいの表現(肌露出を50%ぐらいに抑えるなどと推測)で、アダルトAV並みの撮り方をしている。筆者が鑑賞したのは放送のwowowで、放送はボカシ入れますから、ファックシーンのケツは数シーンでまるまるボカシでした。ネット上の情報で「成田凌のケツ丸出し」との発言があるので、配信やDVD等はどういう表現になってるか確認していません。共同制作の台湾版では修正など一切無いと推測します。

++++++++ バス停セックスシーンの凄み

一番良かったエロスシーンはなんと初っ端、タイトル前の3分ほどのバス停セックスシーン。そのエロスのシチュエーションの高揚感ですね。筆者などは思わず股間に手がいきましたよ。このシーンは凄い。これはネタバレになるから黙っておこうと思ったら、wikiの『雨の中の慾情』原作版のストーリーに詳細に書いてありましたわ。これ「雨の中の慾情」そのものを表現したシーンで、つまり映画は原作をそのまま映像化した訳で、タイトル前に『雨の中の慾情』原作の映画化は終わってるということとなる。

ではその後の2時間以上の映像は何なのかと言うと、筆者が受け止めたテーマはやはり「エロス」ですね。監督・脚本の片山慎三は、短編『そこにいた男』(2020年)で重厚なエロスを描いている。逆に言えばそれ以外の要素(テーマらしきもの)は全部中途半端です。

++++++++ 良くも悪くもない

さて、作品の評価ですが、分かりやすくYahoo!映評の点数を挙げときましょう。総合評価で3.1点(5点満点で)。良くも悪くもないってなところでしょうか。このYahoo!映評の点評の面白いところは1点から5点まで、それぞれ平均して点を取ってる。つまり賛否両論ではなく、評価バラバラが平均になってる。総合で言えば「評価が定まらない」ってなところ。こんな不思議な点評、滅多に見ませんわ。初めて見たかもしれない。

そして筆者の評価ですが、この点評のように「良くも悪くもない」。ただしエロス表現が秀逸ですから、その分「良い」に傾いている。点数付けるとすれば「3」(5点満点で)というところですね。



++++++++

良いところ悪いところザッと言わせてください。あくまでも筆者個人の分析ですよ。まずエロスシーンが上記で申し上げたように優秀、これはこれで終わり。ただしエロスシーンが独立して存在するのではなく、基本的に話の中で出てくる訳ですから、もちろん話は話で重要。ここで、筆者が分析したこの映画の話の構成を言います。

この映画は大きく3つのパートに分かれてます。「幻想」「現実」「妄想・回想」ですね。あくまでも筆者の観点ですよ。
始めの1時間にわたる「幻想パート」は、原作の「つげ義春ワールド」の映像化。これ結構良く出来てます。台湾のロケーションがつげワールドを具現化している。所詮感覚的なつげワールドですから話が変でも全然気にならない。かえって変なところを楽しめる。これで終わりにしておけば、カルト的な妙作で高く評価されたと思う。

そして1時間後に軍の病院で目覚める「現実パート」ですが、これハッキリ演出を切り替えるべきでしょう。演出によってはこのパートだけモノクロ、またはカラーにしたり、リアリティに拘ったりするのが演出の王道ではないかと筆者は思いますが、全然リアリティが無い。残酷描写だけリアルにしたって浮いてますよ。王道の演出をしなければいけないのか?と言えば、いやそんなことはないですよ。どういう演出をしようが作り手の勝手、勝手ですが、話の重要な部分をキチンと描かないのは手落ちだろうと私は思うよ。何が手落ちかは下記に言います。

++++++++ 下記ネタバレ有り、ご注意。












軍の病院で包帯でくるまれた成田凌に森田剛が脈略も無く「あっちのほうはどうなんだ?」と訊く。
成田凌が答える「うんともすんともいいませんよ。見ますか?」

森田剛「いや、いいよ」
成田凌「見てってくださいよ」と病衣を開き、股を広げて股間を見せる(暗くて良く見えない)。
森田は成田の股間をフッと見るが表情が変わり、グッと見る仕草となる。

これをネット上の批評で「性器が無くなった」と表現する人が居ました。筆者は同シーンを確認しましたが「無くなった」という風には見れません。前後の会話からしても不自然。

ここね、筆者が受け止めるに、この映画のテーマはエロス、言い換えれば「性交」なんですから、性器がある無しでは大違い、あっても無くてもテーマを描く重要な要素でしょう。それを何だか分かんないおざなりな描き方をしてどうする? このシーンはこのシーンでいいとしても、他のシーンなりでこの件はキチンと描くべきです。それをやってません。これが最大の欠点。

ちなみに森田剛は全編に渡っていい演技をしています。他作品を鑑みても森田剛は優秀な俳優です。



++++++++

そして最後になる「妄想・回想パート」ですが、これハッキリ言ってグダグダ。一体何の話やら。妄想なのか回想なのか、それとも現実なのか。目を見張るシーンがあるにはあるが、筋が通ってないので「何だか分からん」が先に来る。また「つげワールド」を出しても、そりゃ話の構成上おかしいだろということですよ。

最後のシーンとなる伊島空の濡れ場が、股間が見えそうで救いです。

世界的名監督ポン・ジュノの助監督をやっていたという片山監督、演出力はあるよ。今回の台湾合作、多くのスタッフを抱えた、まあ大作と言っていいかな、それを見事に仕切ったよ。「つげワールド」再現も見事、エロス表現もR15下で上手くやってる。ただ話の作り方、つまり脚本家としては過去作見てもまだまだだと思うわ。今作のような大作を任されるような本を書ける実力はまだないです。

高みから物申して恐縮ですが、話の作り方、もっと勉強していただきたい>片山氏

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