1971年、ニューヨーク。アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは、今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。そんな時、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市にあるチッソ工場の撮影を依頼される。工場が海に流す有害物質によって、罪もない人々が病気になり命を落としている事実を報道してほしいというのだ。(DMM.comより抜粋)
主演のジョニー・デップが製作も担当した作品。結果は成功でしょうね。ジョニー・デップの新境地が開かれているし、作品の出来もいい。興行的には、日本で2.5億円、世界で2億円という情報を見ると、どうなんでしょうね? ヒットしたとは言えないでしょう。
鑑賞前は日本の公害病の代表である水俣病を扱っているだけに、暗い内容だと思ってましたが、しっかりエンタティメント映画になっています。主人公ユージン・スミスの描き方も想像される単なる善人ではなく、自堕落な感じや、揺れる心情なども表現されている。主演ジョニー・デップが上手く演じてるし、ユージン・スミスに成りきっている。写真に対する哲学も垣間見せた。これまでのジョニー・デップの面影は良い意味で無いですね。
製作はアメリカで、日本からは俳優と音楽の坂本龍一のみ関わってる。当時の水俣の面影は現在の日本には無く、セルビアとモンテネグロでロケーション、セット撮影している。見事に日本の風情を出してますね。
日本からの出演は、有名どころで、真田広之、國村隼、加瀬亮、浅野忠信、など。
上記で「エンタティメント」と述べたが、國村隼(チッソの社長役)の悪役ぶりが絶品。紳士だが狡猾、部下を連れてユージン・スミスを広大な工場内を案内、自慢。人払いをして工場最上部の天を衝く渡り廊下でスミスと1対1、たらし込もうとするシーンなんてまるで良くできた007映画の様相。國村隼は役得ですね。
役得と言えば、アメリカの写真報道誌「LIFE」(後に廃刊)の編集長を演じたビル・ナイ(英国俳優)も良かった。文句を言いながらスミスを叱咤激励、誌のプライドも見せ、人間味ある人物を好演している。
浅野忠信は端役だが、熊本の日本人を代表する役どころ(地方のお父さん)で、飄々と演じて新境地。加瀬亮は全編に渡って姿を見せ、さして見せ場は無いが、地元のカメラマン(水俣病で障害あり)を好演した。チッソ糾弾の代表を演じた真田広之はハッキリ言って役不足(
役目が実力不相応に軽いという意味で)、目立ってはいて悪くはないが見せ場は無かった。 筆者は水俣病を1971年当時知っていましたが、今回、この病気が1950年代から発生していたことを初めて知りました。筆者が1971年当時、水俣病を知ったということは、ユージン・スミスの功績だったと言っていいでしょう。
配信・MINAMATA−ミナマタ−