この映画、『黒いジャガー/シャフト旋風』(72)は、ブラックパワームービーの火付け役『黒いジャガー』(71)の第2作目。同時に70年代初頭には、数多くのカッコいい黒人男女を主役としたアクションやクライムムービーが量産された。『黒いジャガー』を始めとしたブラックムービーを述べられることは多いが、この作品単体で述べられることはあまりない。
男の色気という面では、主人公シャフトの活躍ぶり、当時のヒーローアクション映画には必ずあったベッドシーンの男の裸、まあ、普通の一般映画の撮り方ですから大したもんではありません。黒人男性の色気ということでは前作の『黒いジャガー』の方が多いでしょう。
この2作目『黒いジャガー/シャフト旋風』の特出してる所は、宣伝美術と音楽の良さです。私が言わなければどなたも指摘しないと思う(ネットで詳しく探ればあるかもしれませんが)。
まず宣伝美術。これはポスター(下記)をご覧になれば一目瞭然。この世のモノでないようなアクションシーンを絶妙な構図でイラスト描写し、この作品の世界観を見事に表現している。
70年代はこうゆうアクションシーンをイラストでポスターにしてる例は多いですが、この『黒いジャガー/シャフト旋風』の場合、極まってると言っていいでしょう。これらの作風のルーツは60、70年代の007映画の宣伝ポスターでしょう。
作品内容はこれまで白人がカッコいいことをやっていたのを黒人に置き換えた。1作目は映画史、アメリカ史にインパクトを与え、この2作目では、そのブラックパワーを引き継ぎ、特にアクションに重きを置いた。CGなんて無い時代ですから、体を張ったリアルなアクション。が、普通ですね。B級アクション映画と言っていいでしょう。
ところがこの映画の特筆すべきは、この後半全体に渡るアクションシーンにノリノリのジャズ音楽を被せていること。そりゃそうだ。この作品の監督、ゴードン・パークスはもともとジャズの人。
格闘シーン、モーターボートチェイス、ヘリチェイス、カーチェイス、銃撃戦と長々と続くアクションシーンに各パートで雰囲気を変えてズッとジャズが流れる。サントラで映像無しで聞いても高度な出来上がり。聞かせます。
これがこの作品の一番の特徴。聴かせる映画です。他の作品でこの作風は筆者の知る限り見当たらない。イーストウッド監督主演の『ガントレット』でもアクションシーンにジャズ(
ジェリー・フィールディング)が使われるが、この『シャフト旋風』ほど長くはない。
この曲を聴くだけでもこの作品の価値は大きいと言ってよろしいでしょう。