『孤狼の血 LEVEL2』は『孤狼の血』(2018年)の続編。今回は前作のような原作は無く、映画オリジナル脚本とのこと。
wowow放送や映画館イベントなどでは、70年代に量産された「東映実録ヤクザ映画」と同列に特集されていて、実際、今回の『孤狼の血』シリーズの製作中心は東映であり、企画の発端は『一時代を築いた「実録ヤクザ映画」のパワーを再び』といったことと聞いています。
実際、前作『孤狼の血』では、役所広司演じる型破りの刑事の迫力が、確かに70年代の東映作風を彷彿させていた。そりゃそうだ。役所広司は、70年代の東映映画時代をリアルタイムで育ってる。「あの感じで」で、役所の演技力ならサラッとやってのけられますよ。
さて、今回の続編『孤狼の血 LEVEL2』ですが、前作と話は繋がってますが、東映実録路線のテイストはほぼ切れてますね。と言うか、時代背景は平成、話も演出も現代的で、しっかり白石監督作品、現代邦画の秀作に仕上がっています。前作で死んだ役所の役どころ“はぐれ刑事”を今回の松坂桃李が、松坂らしい役作りで見事に演じてる。
話の肝はしっかりしていて、つまりこれは「モンスターヤクザ(鈴木亮平)」と「策略ブチ切れデカ(松坂桃李)」との殺し合いの話ですね。もうこれは、東映ヤクザどころではなく、その猟奇的な殺し方とかで「捜査ものホラー」の領域に近いです。
たたずまいだけで怖さが伝わってくる鈴木亮平の演技も見事。演技とは思えないくらい。刑事のスパイとして組に入り込んでいるチンタ(村上虹郎)を上林(鈴木)が抱きかかえ、覚せい剤を注入するシーンなどは、子供を犯してる大男のようなイメージで淫靡極まりない。
出演俳優も個性派ぞろい。パンツ姿で監禁される寺島進はじめ親分集で、吉田鋼太郎、今回の出演者で一番東映テイストを残してるのが、宇梶剛士。斎藤工のちょっと洒落たヤクザも良かった。実は重要な役どころで地味に演じた中村梅雀。警察上部、普通でない滝藤賢一なんて終盤の主役ですね。
村上虹郎も良かったし(泣けた)、貫録のかたせ梨乃なんて笑うしかない(上手くて)。
中村獅童、早乙女太一ら芸達者も出ていて出番は多いが見せ場は薄かった。これは脚本の手が回らなかったためと推測します。
カーチェイスはあんなもんで良いのではないかと思います。この話でカーチェイスが出来すぎると浮いてしまうよ。ああ、上林(鈴木)の過去幻想シーンは蛇足だな。モンスターヤクザの過去を映像で説明する必要はないよ。前のシーンで言葉や資料で明かされてるんだから。怖さが薄まってしまう。
とにかく作品の出来は良く、東映ヤクザと言うよりは、アメリカのスコセッシ(監督)のテイストなのではないかと言うと誉め過ぎか。
昨今、映画文化の中ですっかり存在が薄くなってしまった映画音楽を『GONIN』(1995年)で鮮烈な印象を残した安川午朗が、この作品でもいい仕事をしています。