
2017年/123分/日本・ドイツ
監督:今泉浩一
脚本:田亀源五郎
出演:馬嶋亮太、Michael Selvaggio、今泉浩一
■ベルリン在住の日本人コーイチは身体もノリも軽い若い日本人旅行者とゲイクラブで出会う。独り暮らすコーイチは、成り行きで自分のアパートにリョータを泊めるが、リョータは毎日のように出かけては現地の様々な男達とセックスをして帰ってくるようになる。そんな彼に苛立ちとも好奇心とも知れない感情を抱いたコーイチは、次第にリョータとのセックスにのめり込んでいく。
**********
まず「オトコの裸」行きましょうってことですが、そもそもこの作品、「ゲイポルノ」のジャンルになる映画ですから、まあほとんどが「男の裸」であると言って過言では無いですね。ただAVや一般ポルノと違う所は、2時間数分の長尺の映像の中にしっかりしたテーマがあり、それなりの話があり、その中でゲイセックスシーンがいくつもあるという建付けです。
一応説明しておきましょう。ゲイ乱交シーンが序盤のみ4人ぐらいの絡み、ここは短く、細かくは描いてはいない。主人公2人の出会いのシーン。その後、まるまる80分ぐらいは、ベルリンにおける主人公日本人青年と各ヨーロッパ人との絡み。10シーンほどある。野外室内と場所はいろいろで相手もいろいろ変わる。それぞれ5分ほど費やし、丁寧に描写されている。もちろん股間はそのまま写るし、フル勃起、挿入、肛門などもリアルに見せている。
起承転結で話を分析すると「転」の部分の話の変わりようが凄まじく、こういう言い方も何だが、「ゲイポルノの羅列」からいきなり「松竹大船調(いわゆるホームドラマ)」に転じた感じ。ただそれは奇妙な展開では無く、この作品のテーマの必然だったのではと最終的には気づきます。
筆者の評価は「良作」。良い作品だが「傑作」とは言えないな。傑作とするなら稚拙さが目立つよ。テーマは重いのだが、鑑賞後の印象は「爽やか」だ。ここがこの作品の最大の魅力だと思う。ラストシーンでタイトルの意味が明確になるのは見事。
********
さーてと、言うこと言ったぜ! では、砕けた口調でこの映画について語ろう。何はともあれ「伯林漂流」は、監督兼実質主役の今泉浩一氏のエロスと作家性で出来上がっている作品であり、今泉浩一氏について述べないと話が始まらんのですよ。
今泉氏を筆者(南島健太郎=fanta)は存じ上げている。知っているとは言っても友人とかではない、筆者がゲイライター時代、数年間の間に取材で数時間、確か2回、試写会などでの談笑が数回、そんな感じだ。真面目に物事に取り組む姿勢が感じられ、好印象を持っている。
一番印象的な出来事を言わせてください。2000年頃の話になるかな?時期は失念してますが、今泉氏が脚本を手掛けたゲイ映画の試写会があり、筆者はその作品を鑑賞。映画内に綺麗なお尻がアップになりカメラパン(移動)すると今泉氏の顔が写った。つまり今泉氏はこの作品の脚本と共に裸の脇役で出演してたという訳。
その作品を見終わって、控室に行ったら、今泉氏が座ってて(すでに筆者とは面識有り)、筆者は開口一番、「いいケツしてるなと思ったら、あなただったよ!」と言ったら、今泉氏「フッ!」と笑ったよ。その笑顔が一番印象深い。
別のゲイ映画監督(その監督はノンケ)の取材のときにも今泉さん居たなぁ。状況は覚えてない(多分立ち話)のだけど、今泉さん、その監督の前で「(監督手腕が)まるでなってない。結構なところ自分(今泉氏)がやったんだから」ってなことを言ってましたよ。スタッフでもキャストでもその作品に真剣に関わっていたから言えるセリフ。
とにかくね、この人(今泉氏)気合入ってるよ。今泉氏の経歴はここでは述べませんが、映画製作に関して真摯に向き合ってる。今回の「伯林漂流」に関しては、「エロス」と「ゲイの生き様」ですよね。出演だけの作品は別として、氏がスタッフとして関わる作品には、このテーマが色濃く出ている。
もうひとつ印象的な筆者との会話。これはファミレスで対面で話していた時です。今泉氏が「今のゲイ映画(1990年代)どう思う?」と筆者に問うた。当時のゲイ映画はENK作品、大蔵映画作品しかなく、ほとんどが一般(男女モノ)のピンク映画のスタッフで作ってた。プロデューサーも監督もノンケだ。まあ映画として出来が良いものもあったが、ゲイ表現に首をかしげざるモノも多かった。筆者は「まあこのぐらいの認識なんだろうなぁと思ってるよ」と答えた。そしたら「優しいんですね」と今泉氏は言った。
戦ってる人だなと思ったよ。筆者はその後、ゲイライターを離れたので、今泉氏を追うことは無かったが、ネットで(当時の新作)「初戀」の告知を見たときは、正直「偉い」と思ったわ。映画造りというモノがいかに大変なモノか。もちろん一人ではできない。「初戀」は拝見してませんが、初恋なんてゲイの生き様の出発点みたいなもんじゃないですか。自分が抱えたテーマを持ち続けてそれを表現する。内容がいかなるもので有れ、その行為は尊敬に値しますよ。