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サントラ・ジェームズ・ボンド・映画音楽アートの研究・映画コラム

「ジェームズ・ボンド映画」のサントラを中心に、映画音楽、映画批評、アートなどを述べていきます。映画コラム・写真集などあります。

ベニスに死す


名作です。これはもう世に知れ渡った評価で、映画史における名作であることは確か。さらに映画を超えた美術品と言っても過言ではない。これは筆者個人が年月をかけて培われた評価で、初見からそう思っていたわけではない。

「退屈」「何がいいのか分からない」という意見もある。これね、普通の映画の見方をしたら分からないのですよ。まず「美」という絶対的なモノがそこにあるということを認識しないとこの映画の良さは分からない。芸術にはたまにそういうモノが出現する。サッパリ分け分からん「2001年宇宙の旅」が未だに映画史に残る名作であるように。

それが分かるのは残念ながら鑑賞者に年季が入ってからなんだよね。「ベニスに死す」主人公の初老の男に感情移入できる年代、象徴的な美を感じ取れる年代だ。具体的な年代は人それぞれだろうが、若くて初見でこの映画の本質の良さを見抜ける人はそうそういないと思う。

この映画は「同性愛映画」「少年愛映画」では断じて無い。ところが公開1971年当時は、日本では耽美映画としてもてはやされた。同時にホモセクシャル映画の金字塔になる。まあしょうがないでしょうね。当時はLGBTの認識なんか無いんだから。ゲイ雑誌『薔薇族』が出来る前ですよ。

情報もない中に「映画」という尖がった形で同性愛(らしきモノ)が出現したんだから、当時のゲイ(当時はホモ)がこの映画を神格化したのも無理もない。神格化されるポテンシャルはこの映画にはありますが、実は繰り返すが「同性愛映画」でも「少年愛映画」でもないのですよ。



筆者はこの「ベニスに死す」を高校生の時に渋谷の東邦生命ホール(今は違う名称)で見ている。伊藤さん(薔薇族・第二書房の代表)が読者のために企画した特別上映会だった。友人数人と見に行った。この時が初見だったかすでに名画座等で鑑賞していたかは失念。初見だったような記憶はないです。

この時の感想は「この少年はタイプじゃない。つまらなくは無かったが、疫病で死ぬなんて不自然」と言ったのを覚えてる。つまり分かってないのですよ。疫病も時代設定や現代のコロナ禍考えればリアリティある話ですよ。

この映画を分かりやすく説明しましょう。簡単にネット上の言葉を借りると「おっさんが美少年に恋をしてムラムラするだけの映画です」ってことになっちゃうんですが、まあそういう見方で楽しめるってところも大いにありまして、オロオロする初老のおっさん(ダーク・ボガード)のいじましい演技を堪能する手もありますよね。

ただ本当はもっと奥があるのよ。その奥を確かめるには当時は映画館に再度足を運ばなくてはならない。ビデオが出てレンタルが出ても「おっさんがオロオロする映画」「美少年興味ないね」で再見する人は多くなかったと思いますよ。

男の裸の観点からでは、美少年タッジオの上半身半裸姿、この時代の流行なのか、全身を覆う水着の股間のダブダブ加減。他男子とのじゃれ合い喧嘩などが色っぽいちゃそうなんだけれども、その裏っ側には「美の象徴」という崇高なモノがドーンとあるので、ここら辺で騙されちゃいけません。

この作品が現代、確固たる評価を得てるのは、近年のNHKを始めとしたBSによる高画質放送に拠るものではないかと推測します。Yahoo!映画評などを見ると「昔はあれだったんだけど、この年になって見ると傑作」と言ったような文面がズラズラ並ぶ。筆者も同様。NHK放送で「こんなに良い映画だったんだ」と認識しましたもの。

別項で「世界一美しい少年」の文面もあるので「ベニスに死す」の文面は早々に締めますが、最後に製作・監督のヴィスコンティの心眼の確かさ。美の象徴を見出した手腕、それら褒め称えたい。それとこの映画の主人公の死に様は最高に美しい。こんなこと昔は思いませんでしたね。

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ベニスに死す
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