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サントラ・ジェームズ・ボンド・映画音楽アートの研究・映画コラム

「ジェームズ・ボンド映画」のサントラを中心に、映画音楽、映画批評、アートなどを述べていきます。映画コラム・写真集などあります。

逆光



秀作ですね。グッとくる感動作と言い換えてもいい。実は、半年ほど前に筆者はこの作品をwowowから録画しておいて、超早送りで全編を見て「登場人物の脱ぎは無い」と判断し、放置していたんです。24才の若輩俳優が監督主演した中編映画に全く期待していなかった。ハッキリ言って馬鹿にしてましたね。

先日「一応しっかり見ておくか」と思い、腰据えて鑑賞したところ「これは…」と思いましたわ。昨今のチャラチャラした恋愛邦画が多い中、この作品は、1段、2段、違います。確実に上を行ってる。あえて欠点を言えば、60数分という中編なので、90分という一般映画の標準の時間からズレてるから、鑑賞者に対し(鑑賞前の)アプローチが弱いということかな。60数分というのは「ピンク映画=動画」の感覚ですよ。

まず男の裸ですが、上記早送りで「無い」と申しましたが、ありますね。ただし主役ではなく、エキストラ男女数組、夜の浜辺のまぐわい。数秒のショットだが、深い情念を感じた。このショットね、相当、演出に気を使ったと推測します。わずか数秒ですが、この表現こそ、この作品のテーマに対峙する。

主演2人は脱ぎません。脱ぎませんが、そこかしこに男の色気は見せてる。例えば薄着、目のカット、裸足で歩く長いカットなど。男2人の微妙な関係を表現している公式スチール写真がネットにありましたので下記に掲げます。ご覧ください。



舞台は70年代との設定。学生が政治議論している描写などから70年代初頭と思われます。この頃に政治結社を作っていた作家・三島由紀夫は市ヶ谷の自衛隊駐屯地で自決している。それ自体は当作品で触れてはいないが、三島作品は全編に渡ってモチーフとされている。極めつけは、ラストで主人公が三島の言葉を引用してこの作品のテーマを締めるシーン。主人公の大学生を演じた須藤蓮の演技と相まって泣けたわ。須藤蓮の演技力(演出力?)には脱帽です。

70年代初頭、三島がゲイであったことがどの程度認識されていたのかハッキリとは存じ上げませんが、三島の処女作『仮面の告白』は同性愛男性の話だし『禁色』などでも男性同性愛は登場、当時の映画などの共演者が三島の性指向を指摘していることなどから、当時でも明白だったのだろうと推測します。

そして、当作品の主人公=ゲイ=三島愛好者…、あまりにもベタではないかと思うのだが、この作品の製作は、監督・主役俳優の須藤蓮と脚本の渡辺あやとの共同企画とのことで「三島の言葉でラストを締める」というキメ技をしたいがために、全編、三島で脚本の筋を通したのではないか? ならば納得であり、その作風は成功している。

この作品の特徴的なところは、キャスティングの上手さもさることながら、カメラワークでしょう。普通の撮り方はしてない。ただし奇をてらうとか、わざとらしいとかではない。何気ないところ。普通撮らないところまで撮る、逆に撮るべきところを撮らない。

例えば海に飛び込むショットではカメラも海に飛び込み、水から対象者を撮ったり、これらは撮影スタッフの提案なのか演出なのかは不明ですが、ラスト近く主人公の重要な行動をあえてカメラをパンさせず、主人公を画面から切ってしまうのは、明らかに上等な演出でしょう。



感心したのは、主人公の幼馴染の看護婦が、同性愛を確率の問題とし、主人公の愚行を指摘するところ。ゲイを描いた作品で理解ある女性が登場する例はよく見るが「確率の問題」を持ち出されたのは初めて見ました。脚本の力でしょう。妙に納得してしまうのと、演じた女優も上手い。

筆者は今作品の監督主演である須藤蓮氏をこれまで認識していませんでした。この「逆光」が初めての出会いです。イケメン路線の俳優のようで、2022年には2作目の監督作品『bluerondo』を当『逆光』と同じく渡辺あや脚本で発表している。今後どうなるかだね。

イケメン主演監督で思い起こすのは、カナダの美形ゲイ監督、グザヴィエ・ドランだが、ドランほどの破天荒さは須藤氏には感じられない。ドランはゲイだから出来得る作風だからね。須藤監督作品『逆光』のゲイは、脚本の渡辺あやの影響だろうと推測します。須藤氏の性指向については分からんし、推測するのも野暮でしょう。

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