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サントラ・ジェームズ・ボンド・映画音楽アートの研究・映画コラム

「ジェームズ・ボンド映画」のサントラを中心に、映画音楽、映画批評、アートなどを述べていきます。映画コラム・写真集などあります。

映画『12人の優しい日本人』のその後

●12人の優しい日本人
製作国:日本
監督:中原俊
脚本:三谷幸喜
東京サンシャインボーイズ
製作:岡田裕
公開:1991年12月14日
上映時間:116分


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何故今更30年以上も前の作品「12人の優しい日本人」なのかと言うと、単純に先日wowowで放送してたのを「もう何回も見てるのだから」とチャンネルを変えようとしたが、ついつい見てしまい。その後、ネットで検索し、知らなかったことを知り得たからですね。それについては下記においおい書きましょう。

映画「12人の優しい日本人」は1991年公開、多分筆者はビデオレンタルで鑑賞したのではなかったか。劇場で見た認識は無いですから。当時からその面白さは感心し、その後の放送などでも何度も見ている。まあ傑作とまでは言えない。「良く出来た秀作コメディ」といったところか。

元は舞台劇で1990年が初演。その後の映画化の脚本にクレジットされている「三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ」の公演だ。映画ではタイトルバックに「中原俊監督作品」とドーンと出るので、映画公開当時は中原俊監督が持ち上げられたし、作品の優秀さも中原監督の手腕とされていた印象があります。

今でさえメジャーな三谷幸喜氏ですが、当時はまだマイナーな存在だったはず。舞台「12人の優しい日本人」は公演毎にセリフを調整するなど、すでに練に練られた脚本(台本)だった訳で、映像化としてはカメラワークなどの技術的な面がメインとなったと推測します。

先日のwowow放送後の対談解説で、リハーサル1ヵ月の上、本番は2カメでほぼ一発順撮りだったとの話が出た。屋外やトイレのシーンもあるし、カット切り替えも相当数あるので「一発順撮り」というのは非現実的で大げさな表現だろうが、舞台を考えればリアルタイムの話進行であって、映画も極力それに近い撮影手法だったのでしょう。そしてそれが充分生きた。そういう面では演出の手腕と言っていいかもしれません。

さて「その後」ですが、監督・脚本、陪審員役12人の俳優のみ述べます。人数多いですからなるべくコンパクトに申し上げるつもりですが、言いたいことは言わせてください。本当は写真付きで書きたいところですが、映画シーンでの顔写真でなければならず、著作権上難しいものがあり、確認されたい方は画像検索等されてください。恐縮です。

・脚本・三谷幸喜
現在進行形で一番売れてる人は、脚本の三谷氏でしょう。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本、TBSテレビの報道番組『情報7daysニュースキャスター』にレギュラー出演している。

・監督・中原俊
監督の中原俊氏ですが、前年(1990年)の『櫻の園』の評価が高く、その手腕を期待してその後の作品をいくつか鑑賞しましたが、どうも切れ味が無い。評価もされないしヒットもしない。2008年に自作の『櫻の園』をリメイク。製作反対の声をネット上で多く聞きました。そりゃそうだ。名作とされている過去作品を自ら作り直す必要はない。結果、あまりいい評判は聞かなかった。この10年、作品は見られず、現在、大学教授のようです。

・塩見三省
さあ役者ですが、筆者の印象に強い方からドンドンいきます。
陪審員長を演じた塩見三省。コンスタントにTV、映画にバイプレイヤーとして出ています。もう笑っちゃうと言うか、2012年、北野武監督『アウトレイジ ビヨンド』での大阪ヤクザ幹部の名演。その怖さったら半端じゃない。武が「怖いな」と言ったとか。あの演技は何度見ても飽きません。

・山下容莉枝
意外と思う方が多いかもしれませんが、優柔不断な主婦を演じた山下容莉枝。劇中のセリフでは「う~罪」が印象的。この女優ね、只者じゃないと筆者は思ってるんですが、いまいち埋もれてる感があります。TVドラマにだいぶ出てますね。山下容莉枝は『12人・』と同じ年、1991年にVシネマ『タフ PARTⅢ ビジネス殺戮篇』(監督・原田眞人)に殺し屋役で出演している。wikiに載ってないので黒歴史なのか? その狂った人格、凄みの演技は原田監督の独特な演出もあっただろうが、凄い女優だと思わせました。ああゆう役はその後、筆者は拝見してませんね。封印か?

・加藤善博・村松克己
鬼籍の方々を述べましょう。まずショッキングなのは、陪審員長の左に座っていたお調子者の30才男性役、加藤善博。「その手帳売ってくれません?」のセリフが印象的。加藤善博氏は、2007年4月、48才の時、渋谷区の公園(代々木公園との話あり)首を吊って自死。原因は不明。筆者は今回初めて知ったので驚いています。『12人・』の後はTVの脇役で活躍していた。1983年の『家族ゲーム』での体育教師役が印象深い。
自信家の歯科医を演じた村松克己。2001年12月、胃がんのため62才の若さで亡くなっています。

・上田耕一
議論が苦手だが喫茶などの注文を受けるのが得意な51才を演じた上田耕一。この『12人・』の時点で一番有名人だったのではなかろうか。70年代からTVの脇役、80年代には、伊丹十三監督作品を中心に存在感を示していた。ゴジラシリーズでは常連。2010年代まで活躍は続くが、最近見ませんね。もう80才を超えてますから、お休みでしょうか?

・豊川悦司
中盤から弁護士を名乗り活躍する正体不明の男を演じた豊川悦司。この『12人・』の時期はまだ無名に近い俳優でした。前年(1990年)にはVシネマ『タフ PARTⅠ誕生篇』(監督・原田眞人)に三原じゅん子と共に殺し屋役で出演している。今や邦画の重鎮ですが、ブレイクはこの『12人・』かもしれません。

・梶原善
気性が荒く、無罪を頑として主張する32才の男を演じた梶原善。この『12人・』を機に、その後TV、映画のバイプレイヤーとして活躍。最近TVの街紀行番組で拝見します。

・林美智子
強い言葉で追及され鼻血を出してしまう50才女性を演じた林美智子。往年の女優ですよね。キャリアは長いが、TV、映画共、出演はさほど多くありません。『12人・』の時点で一番の大物俳優ではなかったか。wikiによると映画『種まく旅人〜みのりの茶〜』(2012年)が最新です。現在(2023年)、83才。

・相島一之
唯一「有罪」を主張、今作の主役ともいえる男を演じた相島一之。『12人・』を機に、その後、TV、映画のバイプレイヤーとして活躍。三谷脚本の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)では運慶を役じている。

・二瓶鮫一
「フィーリングかなぁ~」のセリフが印象的な61才の男を演じた二瓶鮫一。60年代からの俳優ですが、wikiを見る限り、TV、映画に関しては『12人・』後の方が多く見られます。舞台中心の俳優のようです。映画の最新はwikiによると『僕はイエス様が嫌い』(2019年)となります。

・中村まり子
メモ魔37才の女性を演じた中村まり子。父親は老齢名バイプレイヤー中村伸郎。中村まり子自身も劇団を主宰している。wikiによると「三島由紀夫が主宰した浪曼劇場の『サロメ』(1969年入団)」とあるから筋金入りですね。舞台が中心のようで、TV、映画共、70年代から出てはいるが本数は少ない。『12人・』以降、映画は2本のみ、TVは3本。最新は『私はラブ・リーガル』(2010年)の吹き替えと記されています。

・大河内浩
ダヨ~ンのおじさんのいたずら書きをしてた男を演じた大河内浩。「肥満児も連れて来い!」のセリフが印象的。80年代からTV出演だが、『12人・』以降のデーターが多く記されています。
TV、映画、Vシネマ、舞台も多くあり、映画の最新は『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(2021年)、TVは『ハマる男に蹴りたい女』 (2023年)となり、現在進行形の様相です。

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『12人の優しい日本人』は、アメリカの名作映画『十二人の怒れる男』(1954年・監督シドニー・ルメット)のパロディが大元です。当時、日本には陪審員制度ではなかったため、虚構の話としてコメディが成り立った訳ですが、その後、日本も陪審員制度となり絵空事ではなくなった。実際の日本の裁判の過程は、この映画の様子とは違うでしょうが、話の運び、キャラ設定など現在の目からでも十分、生き生きと通用します。

筆者の目から少々残念なのは、終盤、猛スピードで話が進み、鑑賞者が嚙み砕く間も無いままラストに突入。最後のオチが、とくにどうと言うこと無いことであっさり終わってしまうことですね。まあ、終盤急ぐのも「叩き込む様に」という演出意図でしょうし、あのラストも散々練った結果でしょう。帰り際の陪審員たちは爽やかでした。


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